作品1 死は旨し酒
作品2 死が好きである
作品3 あ、うん
作品1 死は旨し酒
作品2 死が好きである
作品3 あ、うん
死は旨し酒 冷えた酒を手に取り
ごくりと飲む 嬉しさよ
死は笹の葉笛 口に寄せるときの怖さ
風に送る音のふるえる美しさよ
酒のように酔い 笹のようにふるえよ
次に 青い空にかすかに吸い込まれ寛げよ
死は旨し酒 すがしき風
死が好きである
だから、最後にとっておきたい
おいしいケーキをとっておき最後に食べるように
好きな死を最後の最後にとっておき
まわりの人に 「悪いね。おれだけ」と言って、
すまなそうに、でも、
「おいしい。おいしい」と、満面の笑みを浮かべ
最後の死をケーキのように食べるのである
最後の「あ、うん」を花火のように
するすると夜空に昇らせ、死にたいものだ
最後の「あ、うん」も詩になって
花火のように咲いて広がり、人々を驚かし
声を上げさせ、やがてうっとりと
しめやかに、こころを鎮めていく
最後の「あ、うん」は、そんな花火のように
死が好きである だから、最後にとっておきたい
おいしいケーキをとっておき最後に食べるように
好きな死を最後の最後にとっておき
まわりの人に 「悪いね。おれだけ」と言って、
すまなそうに、でも、
「おいしい。おいしい」と、満面の笑みを浮かべ
最後の死をケーキのように食べるのである